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解説

日本近代翻訳文学発祥の地 静岡

幕末に英国人から渡された1冊の本は、明治3年静岡で翻訳され、
多くの青年に生きる勇気、希望、夢を与えました。

奥付

Samuel Smiles “SELF-HELP”の翻訳 中村正直著「西国立志編」
現存する中で最も古いと思われる明治3年の年号が入った表紙と奥付、第1編邦国および人民のみずから助くることを論ず。          
(静岡県立中央図書館蔵)

 伊豆国・宇佐美村(静岡県伊東市)のもと農民の子として東京で生まれた中村正直は、1866年に、幕府の留学生取締り役としてロンドンに滞在し、維新後は、駿河府中の学問所一等教授として静岡に住むこととなりました。
 静岡に赴任した正直は、ロンドンを去る際、友人のH・U・フリーランドから餞別として贈られたサミュエル・スマイルズの『セルフ・ヘルプ』の翻訳にとりかかり、明治3年(1870年)静岡藩の藩金の援助を得て、『西国立志編』として静岡から出版しました。
 『西国立志編』は、自由主義の倫理原則と自主独立の努力による希望を教えるもので、出版されるや大ベストセラーとなり100万部以上を売り上げたといわれます。
 「天は自ら助くる者を助く」。現代語に言い換えれば、「志を立てて努力をすれば、必ず成功する」というこの言葉は、幕末から維新の急激な時代の転換に生を模索する青年たちを鼓舞し、新しい時代を切り拓く力を与えたのでした。
 正直はさらに静岡で、ジョン・スチュアート・ミルの『オン・リバティ』を『自由之理』として翻訳出版したほか、シェークスピア、ベーコン、ミルトン、ワーズワースなどの英米文学、哲学などを最初に日本に紹介しました。
 中村正直の翻訳によって、明治の日本人は、西欧の新しい価値観と出会ったのです。

 静岡県立中央図書館葵文庫には、正直の翻訳書をはじめ幕末明治期の貴重な諸外国の辞書などが多数収蔵されています。


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