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最優秀賞 |
「富士の白雪ゃ」 |
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♪富士の白雪ゃノーエ♪と口ずさむ祖母に「まるで白拍子」と陰口を叩くくせに農協主催の伊豆旅行の宴会で♪富士の高嶺に降る雪も♪を歌い、「一緒に踊らまいかと引く手数多で――」と自慢した母。嫁姑の修羅場を乗り越えて、祖母の最期に「お婆さんのノーエ節が聞こえてきてよオ」と大泣きした母。冠雪した富士を仰ぐたび、私はノーエ節とお座敷小唄をBGMに祖母と母を思い出すのだ。
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優秀賞 |
「秋野不矩、インド絵画の祈り」 |
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日本画家として出発した秋野氏が花鳥風月とはかけ離れたインドをなぜ描くようになったかを知りたいと思いました。一年間のインド生活の中で信仰深い人々との出会いや、大いなる自然をテーマにした作品に魅せられました。浜松市のはずれにある美術館は日本とは思えない作りで、何度も足を運び秋野氏の息吹を感じ文章にしました。
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優秀賞 |
「新緑と水の街 三島よ」 |
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苦悩を胸に訪れた三島の街は、新緑の中にあった。友と私は会員の高齢化で、詩の会の存続が難しくなって、三島在住の先生をお訪ねしたのだ。ところが街中の新緑のまぶしい程の美しさに心をうばわれ、何も言えない。源兵衛川の流れに、ミシマバイカモが青々と揺れている。先生は何も言わなくても、私達の気持ちをわかってくれていたのだ。
「心が落ち着き、また詩集が出したくなったら、その時に参加者を募ったら」と言われた。
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優秀賞 |
「三島への旅」 |
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四年前からがんを患い、現在も闘病中の父の、セカンドオピニオンをとるために、家族みんなで長泉の静岡がんセンターへ行った時のことを書きました。前日に三島駅の近くでおいしい鰻を食べたこと、診察時の先生の心に残る言葉など、一泊二日の短い旅でしたが、家族にとって大切な思い出に残る旅となりました。闘病中の父を励ましたいという思いや、父を介護し支え続けている母と妹への感謝の気持ちが、この「三島への旅」となりました。
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優秀賞 |
「海の誘惑」 |
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休日の朝、海と富士山を見たいと思い立ち、子供の頃に遊んだ沼津に出かける。普通切符の途中下車で熱海駅前の足湯に癒され、温泉饅頭を楽しむ。目的の沼津港では富士山、美味しい魚料理を味わい、深海水族館シーラカンス・ミュージアムの展示に夢心地。千本松原で歌人の若山牧水を思い出しながら、時間を忘れて波と戯れる。
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優秀賞 |
「井伏鱒二とワサビ田と釣りと」 |
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井伏鱒二という作家も、旅の中からふと絵のような場面をつくり上げている。生誕百二十年の記事を見たとき、私は自然に日頃の読書の中から、伊豆に親しんだ作家の姿が浮かんだ。ワサビ田と釣り、そして、亀井勝一郎や太宰治も一緒に登場させている伊豆という世界を、作家は楽しく語っている。過去の作家の残した文学的世界は、伊豆という風土の中に色あせることなく静かにもえている。
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特別奨励賞 |
「変わらない夏」 |
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大学生になり浜松の実家を離れた私は、夏に帰省した際、中学の同級生と久しぶりにある場所を訪れました。当時と変わらない夏風に揺れる木々の風景は、あの夏の日に亡くなった祖母との思い出を私に蘇らせます。新しいまちでの生活に慣れていく一方で、亡くなった祖母も含めた故郷浜松への親しみの思いを、改めて自分に根づかせたいと思い、この作品を執筆しました。
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