|
最優秀賞 |
|
|
|
|
|
磐田市にある豊田熊野記念公園には毎年見事な藤が咲き、人々の目を楽しませてくれる。その土地は能の演目で有名な熊野の生地である。毎年母を連れてその美しい藤を見に行っていたが、忙しさに追われる中で季節だけが過ぎていた。そんな時に来客を案内し公園を訪れると藤まつりが開催されていて、熊野の歴史に触れることになった。遠き平安時代に思いを寄せた時、年老いてきた母がたまらなく愛しく感じる自分に改めて気付く。
|
|
優秀賞1 |
|
|
|
|
|
静岡県の、無形文化財に指定されている、「妻良盆踊り」は、毎年8月15日、妻良の大浜で行われる。身ぶり、手ぶりに、独特の優雅さがあり、念仏踊りの流れをくむと言われている。唄や踊りが大好きだった義母と、夫私の3人で、伊豆へ移住して、初めて見た。どこかせつなくて、哀愁の漂う、都会の盆踊りとは全く、違う盆踊りは、義母や私達の心に深くしみこみ、忘れられないものになった。
その義母も、今はもういない。
|
|
優秀賞2 |
|
|
|
|
|
僕の父親は、常にじっとしていられない人だった。自分が行動する時は人の話など聞かない人で、その性格は結局死ぬまで変わらないままだった。父の死後、遺品を整理していると、僕は『これが私の夢の地図』と書かれた紙の束を見つける。それは、広げると父の部屋の床が全て埋まるほど大きな地図だった。 僕は、地図を見ながら父を思い出していた。
|
|
優秀賞3 |
|
|
|
|
|
川根徳山の盆踊り「鹿ん舞」が行われた夜、ワゴン車で7人の高齢者を連れて来てくれたのは高島さんという若い事務局の男性だった。
鹿ん舞は農作物を荒らす鹿を追い払い、豊作を祈願するという神事で、月明りのもと山里の幻想的な風景を堪能した。私達はロッジにはいり、温泉に浸かった。翌朝、若い女性と子供さんが二人慣れた手つきで笑顔で食事の支度をしてくれた。高島さんのご家族だ。数日して、その高島さんの訃報が知らされた。
|
|
優秀賞4 |
|
|
|
|
|
富士山の恩恵を受け、清水町だけでなく静岡県東部の水を補う柿田川。冷たく清らかなその水は、今も昔も人々の暮らしを支え、癒している。徳川家康も目を付けたその麗しい大地の歴史は、自然の大切さや儚さというものを訴えかける。今のその姿とは似ても似つかない柿田川の歴史、地元の人々に愛され守られた成果を是非知ってほしい。
|
|
優秀賞5 |
|
|
|
|
|
湖西市新居町にある神宮寺の境内に一つの碑が立っている。昭和20年7月に墜落し、全員死亡した米軍兵を弔うものだ。鬼畜米英と言っていた時代、寺の住職はなぜアメリカ兵を丁重に扱い、碑まで建立したのだろうか。それはやはり日本人が持つ死者に対する心、死んだら誰でも仏になる、という考えがあったのに違いない。ここにも美しい心を持った日本人の姿があった。
|